コラム

2025.03.03

気になる相続問題①

所長弁護士 當真 良明

「気になる相続問題」シリーズ

 

最近、「相続」に関する問題が増えておりますが、「相続」に関する実際上の注意点について、「気になる相続問題」としてシリーズでお伝えしたいと思います。

 

シリーズNo.①

【遺言で財産を全部貰ったのに、思いがけずピンチになる場合?】

1 最近、遺言書の利用が増えております。制度的にも、公正証書遺言以外にも法務局での遺言書保管制度などが創設されて遺言書の利用が増加していると思われます。

また、近時は、遺言書の内容においても、被相続人(親)と同居している特定の相続人の一人に、財産全部を相続させる内容の遺言書が増えています。

被相続人と同居している相続人は、遺言書作成について被相続人を誘導しやすい立場にありますので、ついつい遺産全部を自分が取得する内容の遺言書をつくりがちになります。

2 しかし、このように、遺産全部を取得する内容の遺言書を作成した場合、他の相続人の遺留分との関係で、ケースによってはピンチになる場合があります。

まず、第一は、一般的な問題として、他の相続人には遺留分がありますので、他の相続人が遺留分権を行使した場合、完全に遺産全部を取得することは法律的にはできません。遺留分は、法定相続分の半分ですので、相続人が子2人の場合、1/2の1/2=1/4については、他の相続人に遺留分が発生します。

また、第2に、平成30年相続法改正で遺留分の内容が「遺留分侵害額請求権」に変更されたことです。すなわち、従前は、遺留分減殺請求をしても、例えば不動産は「共有」との効果でしたが、改正後は金銭賠償請求権となり侵害額を、一括して金銭で支払う義務が発生することとなりました。

その結果、例えば、相続人が子ども2人(A,B)の場合に、被相続人の遺産の大半が不動産(1億円相当)で、Aがこの遺産を全部もらったとすると、遺留分侵害額は4分の1の2500万円となりますので、AはBに、一括で金2500万円を支払義務が発生します。現金で2500万円を捻出するのは、通常は非常に難しいことから、その支払資金の準備に苦慮することになります。

このように、遺留分の問題を考えると、単に遺産をもらえば大丈夫ということはありません。このような状況を招かないためには、遺言作成段階、相続発生段階、遺留分請求者との交渉段階等の諸段階で、専門家と相談しながら進めることが大切となります。

詳しいことは当事務でご相談下さい。

なお、今回のケースのような場合には、他にもいくつか注意点がありますので、次回以降で説明したいと思います。

                        弁護士法人サイオン総合法律事務所

                        代表弁護士 當 真    良 明